流れを汲みて源を知る 

ながれをくみてみなもとをしる

  ※ この話の前の小話はこちら →  如是我聞 


「あ、シッカマルー!」
相変らずやる気なく歩いているシカマルを発見して走りよる。
こっちに気付いたシカマルは呑気によう、と手をあげる。
「この前借りた本、大分読んだぜ!あとちょっとだから、まだ借りてていい?」
「あー、全然いいぜ。ゆっくり読めよ」
「おーサンキュウ!」
ニシシ、と笑う。本の話をした時、ちょっとこの前のカカシ先生と姿がダブッた。
「あのさ、あのさ」
あの話をしたくてウズウズしてた俺はひとまずそれはおいといておく事にする。
つか、忘れそうだけどま、いっか。
アカデミーの頃いたずらを思いついたような何やらウキウキとした気分だ。
シカマル驚くだろーなあ。
「この前カカシ先生に聞いたんだけど、あの本シカマルのとーちゃんがアスマ先生に
あげたんだって!」
「あー、俺もソレこの前親父に聞いたわ」
まったくアスマのヤツ、全然聞いてねっつーのと愚痴ってるシカマルに俺はガーン!
とショックを受ける。
「えー、知ってたのかよ!つまんねってばよ〜」
ブーブーブーと思わず口を尖らせる。
「そう言うなって。俺だってお前に本貸した後に聞いたんだぜ」
なだめるように言われても何かちょっと悔しい。
「んーじゃあ仕方ない、おあいこって事にしとくってばよ…」
「何だよソレ、意味わかんねー」
お前も仕方ねーなあと笑うシカマルに不満そうな顔を向けると、しゃーねえ後で一楽
行くかと言われたんでそれで手をうつことにした。
「言っとくけどワリカンだかんな」
「えー」
「えーじゃねぇよ。俺は一応本貸してやってる方なんだけど…」
いまやあ無理やり貸したようなモンだけどさ、と言い始めたので慌ててソレを遮る。
別に本を借りた事を後悔している訳じゃない。
「と、とにかく!ちょっと歩こうってばよ!」
まあこのまま立ち話もなんだしなってシカマルが同意したので、そのままぷらぷらと
二人で当ても無く歩き出す。
「あの本、意外とおもしれーだろ」
ふいに思い出したように聞かれる。
「ああ!なんか将棋の本のくせに、ちょっと違ってて面白いってば!」
そっかと笑うシカマル。その顔は穏やかだ。
あの本、後半は将棋の話なんだけどそれだけじゃないって感じの話なのだ。
んー、何っての?将棋を通して他の事にも通じるみたいな?
こんな本をシカマルは下忍の頃、既に読んでいたのかと思うとちょっと悔しくなった。
まあそりゃ、俺は頭脳派じゃないけどさ。
そんでもって、シカマルのそんな素質を見抜いたアスマ先生にちょっとびっくりした。
アスマ先生って正直そんなにやる気がある先生には見えなかったし。
まあそんな事言ったらカカシ先生だって似た様なスタイルなんだけどさ。
そーいやイルカ先生だってすっげぇ驚いてたもん。俺とドベコンビだったシカマルが
いきなり同期のみんなの中で真っ先に中忍になって、更になんか頭も良かったって
聞いてさ〜。まーめっちゃ喜んでたけども。
「アスマ先生かー」
思わず口からポロっと出てしまった。
「あー、何だよ」
その口調に、シカマルはもう動揺しないんだなってちょっと関心しつつ再び口を開く。
「カカシ先生、あの本見てちょっと懐かしそうだった。なんか意外だったなー」
「あー、あの二人結構仲良かったみたいだしな」
「え?そうなの?」
普通に軽〜く友だちなのかと思ってた。なーんか何度も言うようだけど、カカシ先生
いっつもあんなだし。
「お前カカシ先生とは仲よさそうなのに、知らなかったの意外だな」
「うえっ?」
逆に聞かれてこっちが驚いた。
そういえば俺ってばカカシ先生の事ってあんまり知らないかも…?
思わずドーンと落ち込む俺にシカマルが笑う。
「まあカカシ先生にはそーゆーのがいいんだよ、きっと」
「ほえ?何で?」
意味が分からずポカンと見やる。
おま…ちょっとアホ面になってっぞと余計な一言と。
「カカシ先生って上忍で元スゴ腕の暗部だろ。だったら俺らにゃまだ想像も出来ねー
ような任務とか、経験色々こなしてきてんだろーけどよ。そんなん、わかりっこねぇし、
そもそも当事者じゃねえ奴がよ…って」
あー、なんか言いたいことと違うなーってガリガリ頭をかくシカマルを黙って見る。
「…まあ噂とか聞いて分かったよーな振りをするんじゃなくてな。今の、そのまんまの
カカシ先生を真正面からちゃんと見てるお前の方が、きっとあの人にとってもいいん
じゃねえかって思っただけだよ」
あーなんか言いたいこと伝えるって難しいなってシカマルは頭をかいてるから、本当
はもっと伝えたいことがあるのかもしんないけど俺には今の言葉だけで充分だった。
「そっか。そうだといいな」
「いいじゃねーか、これから色々知っていけばよ」
今更焦ったって過去にゃ追いつけねーからよって、なんだか見たことない顔して言う
から俺は再びポカンとシカマルを見やった。
そう言えば俺も背が伸びたけど、昔と視線の位置が変わってないとどうでもいい事に
気付いたり。
「だからナルト、アホ面になってっぞ」
呆れたようなシカマルにハッと我に返る。
「ムキー、なってねえってばよ!」
「ほんっと、お前はかわんねーなあ…」
やれやれと肩をすくめるシカマルに更にくってかかろうとして。
「ま、それによ。弟子が師匠を越える姿を見せてやるってのもきっとおもしれーぜ」
シカマルが今度はこっちを見てニヤってどっかで見たことある顔をした。
「いいな、ソレおもしろそうだってばよ」
やっぱりカカシ先生を一度は心底、驚かせてやりたいもんね。
ニシシと笑ってると思い出した。あの笑い顔、アスマ先生だ。
弟子は師匠に似るって本当だったんだなっーてこっそり思った。
一楽でラーメン食べて家に帰った俺はふと。
「どーうしよう、エロ仙人みたくなったら…」
ちょっと余計な心配をしてみたりした。