「ところでダルイさん、聞きました?」
「ああ」
「面倒くせぇことになってきましたね」
「まったくだ」
はぁ、とどちらともなく溜息。
「うちの火影様は机に何か所もヒビ入れちゃって今から請求書が恐ろしいですよ」
「うちの雷影様は更に壁ぶち破っちまったからな、もっと恐ろしいぜ」
ははぁ、と先程より深い溜息が二つ。
「おまけにうちのアレが当初の計画ぶち破って暴走しちまって」
「おまけにうちのアノ人が一緒になって暴走しちまってなぁ」
「でしたねぇ」
若干遠い目の二人。
「更に止めに行った筈の人が幇助しちまいましてねぇ」
「あー、本来は止めに行った筈なんだよなあ」
ハハハハ。
笑いも乾くしかない。
「アレでも一応うちのトップなんスすけどねぇ」
「まったくもって同じだけどな」
「…俺、この戦争が終わった後の方が怖い気がしてきました」
「間違いなく貧乏くじ引かされそうだよな」
「こういうトコ、我愛羅は容赦なさそうだしなぁ」
「水影様もキッチリしてるからなぁ」
土影様に至っては言わずもがなと頭を抱える二人。
「面倒ですね」
「ダルイな」
「…何あの辛気臭い二人」
「しっ、ダメだよイノ。今、未来の巨頭会議が開かれてるんだから」
「…チョウジ、何ソレ?」
「まあ頭のいい人は大変だねって話だよ」
「成程ねぇ、ご愁傷様」
シカマルとダルイさん
最初に背中に、ぼんやり何かが見えるって思ったのはいつだったろうか。
仲間の輪に入れてもらえず項垂れてその場を離れるチョウジの後ろ姿だとか。
はしゃいで友達をおいかけていくイノの揺れる髪だとか。
夕闇迫る公園で一人ポツンと佇むナルトの背中だとか。
そうするうちに色んなもんが見えるような気がしだして。
また明日なって背中を向けて別れる時でさえ、同じ気持ちの時はなくて。
同じ人間の、何一つ同じものがない背中。
喜怒哀楽は勿論で。
任務に出てゆく親父の背中だとか。
それを静かに見送るおふくろの背中だとか。
もう二度と会えない誰かの背中だとか。
そんな事を考えているとふと。
ああ、黙っていても伝わる想いがあるんだなって。
うまく言えないんだけどな。
何かを背負った背中が、重いものだけじゃない何かを伝えられるように。
まだまだ守られてばかりのヒヨッコだけど。
黙って背中で語れるようになってみてぇもんだ。
シカマル独白